Re:Ron連載「共有地よ! 三島邦弘の思いつき見聞録」第2回
「パブリックな夜遊びを」 たゆたいながら文化へ向かう あなたと公園の関係性
NIGHT PICNICは、神戸都心の中心にある都市公園の夜を、もっと日常的に使いこなし、そこで豊かな文化を感じられたら、夜のまちでの過ごし方が増え、豊かな暮らしにつながるのではないかという仮説を検証するプログラムです。日常と非日常の間をたゆたいながら、夜のパブリックライフがこの街の文化として定着していくことを、そして公園がまちの人ひとりひとりにとって、生活の中で意味合いを持てるような未来を目指しています。(ナイトピクニック公式HPより)
せっかくなので、イベントを・・・?
ぷお~~~~ぅん。
とつぜん、大きな音が体にひびく。
(な、なに、なんの音?)
平日木曜日の午後7時過ぎ。私はマイク片手に、芝生に置かれたちいさな椅子に座っていた。同じくマイクを手にもつ隣のおじさんがほほえみを浮かべて言う。
「汽笛です。3回鳴るんですよ」
そっか、汽笛か。うっかり忘れていた。いま自分がいるのは神戸、港町なのだ。視界に入っていないものの、すぐそこに海がある。
ぷお~~~~ぅん。
もう一度、汽笛が鳴った。二度目の低音がゆっくり体をめぐる。そのとき、空の色の濃度がぐっと増した。暑すぎず、寒すぎず、こんなに快適な気候は、年に10日もないのではないか。夕闇が深くなり、初夏の風がさわやかに吹き抜ける。
2025年5月28日、私は神戸・三宮駅から徒歩10分足らずにある「東遊園地」にいた。ナイトピクニックというイベントに、ミシマ社として出店。その話は、前回の最後に書いたとおりだ。
- Re:Ron連載「共有地よ! 三島邦弘の思いつき見聞録」第1回
主催者のひとりI氏は、「出店します」と私が返事した直後、こう言った。「ありがとうございます。うれしいです。あ、せっかくなので、トークイベントに出てください」
(えっ?? 「せっかく」の使い方まちがってない?)。なぜなら、こちらは依頼を受け、出店する側。「あらかじめ言っておくと、そんなに売り上げにはならないと思います」とI氏自らが言う、そのイベントに。もうかるわけでも、地元のイベントでも、ない。I氏の団体とは、初めて連絡いただいた間柄。そんな「ないない」尽くしの場である。ちなみに、相手の熱意に打たれて、ということでもない。熱意はあるのだろうが、I氏にはなんとも言えぬ抜け感がある。平熱のひととでも言おうか。念のため申し添えると、「共有地よ!」の原稿執筆のためというモチベーションでもない。この時点では、こうした連載をもつとはつゆ思っていなかった。
では、なぜ出たのか? しかもトークを引き受けるとまで決めたのはどうしてか?
前段がある。4月末のナイト…